初めて原発被曝労働者の事実を知ったとき、私はこの日本という国が如何に虚飾に満ちたものなのかを知った。
まだ自分が若かった頃、私は日本という国は、侵略戦争の反省から作られた世界に誇れる「平和憲法」を持ち、確かに差別とかはあるにしても戦争を放棄した平和な国だと学校で教わった通りに思っていた。
しかも「世界で唯一の被爆国」であり、そんな国は核兵器なんて開発しないし、被爆者なんて生み出さないと勝手に思い込んでいた。
しかし・・・。
樋口健二さんの「闇に消される原発労働者」というこの本を読んで、それまでも私の「平和国家日本」「豊かな国日本」のイメージはすっかり崩れ去った。私はこれまでマスコミで流されている虚飾により勝手にそう思い込まされていただけなのだと・・・。
日本に50基以上ある原子力発電所。テレビではコンピューター室の画像だけが流れ、あたかもハイテクな原発では安全な場所でしか人間が働いていないかのようである。
しかし、放射能が充満している原発内部で、何も放射能の危険性を知らされていない日雇い労働者たちが年間何万人という規模で働かされ、被曝しているのだ。
そして、わずか数日原発で働いたために被曝による白血病や原発ぶらぶら病で働くことも出来ず、かといって補償を受けることも出来ず、亡くなっていっているのだ・・・。
こんなことが日々「原子力発電はクリーンなエネルギー」の名の下に繰り返されているのだ。
東海村JCO事故は記憶にまだ新しい。あの時も作業員が大量の放射線を浴びて亡くなった。しかしあのニュースは大々的に報道された。けれど日常的に生み出されている原発被曝労働者のことは全く報道もされず、騒がれもしない。これが「世界で唯一の被爆国・日本」の実態なのだ。
まさに日本社会の暗部として徹底的に隠蔽され「闇に消されて」いるのが原発被曝労働者たち。
「クリーンで地球温暖化の原因となるCO2を出さないエネルギー」と電力会社が宣伝している裏側でどれだけ多くの人々が犠牲になっているのか、その真実を私達は知らなければならない。決して「知らない」では済まされない重たい事実がこの本にはある。
大体、数万年もの気が遠くなるような期間を管理しなければならない放射性廃棄物を大量に生み出しておいて、一体何が「クリーン」じゃ、とも言いたくなる。私達が歴史を学ぶにしても
人類の有史などわずか数千年のことに過ぎない。そんな気が遠くなる期間を、一体誰が「安全に保管できる」などと言えるだろうか?
後世の人類にとって負の遺産にしかならない放射性廃棄物を生み出し続けている、そのこと自体が、狂気の沙汰としかいいようがない。
原発は世界中からなくすべき、人類にとって「負の遺産」でしかない。